今回の記事で紹介する映画は2022年5月からNetflixで独占配信された「Senior Year(シニアイヤー)」です。
主演のレベル・ウィルソンは「PITCH PERFECT(ピッチ・パーフェクト)」シリーズで知られていますが、大幅なダイエットに成功したり、特に最近でも共演者からの性被害を公にしたりとニュースで顔を見ることがあると思います。
この作品は「高校のチアリーディングチームに所属するステファニーが、演技中の落下事故で、20年の時を経て昏睡状態から覚醒し、37歳で再び高校生チアリーダーになる」というコメディ映画です。
オージー・イングリッシュの違いを楽しめる
映画の大きな特徴としては主人公であるステファニーがオーストラリア出身であることです。
オーストラリア英語は「オージー・イングリッシュ」と呼ばれ、ルーツにはイギリス英語があると言われています。
発音やアクセントだけでなく、好んで使われる言葉に違いがあります。特にこの作品の舞台は高校生活ですから少し下品なスラングを含めて英語の特徴がよくわかります。
作品中の一節の中にオーストラリア特有のスラングがあったので一節を紹介します。
どこにでもいそうで地味で孤独な…そういう子を向こうではダサ野郎って呼ぶの。
“nigel” a person who doesn’t have any friends;
あるポータルサイトにオーストラリアのスラングを紹介している記事があったのでそこから ”Nigel” の意味を引用しました。
これだけを見ると単に「友達がいない人」という意味の言葉ですが、スラング的には「ダサい人」とかそのような意味で使われています。
また、回想シーンの中で母親に自分のコンプレックスを打ち明けるシーンがあります。そこで見た目などのことを挙げた後「Rの音を発音できない」ということを付け加えます。
オージー・イングリッシュの発音の特徴として「Rの音がない(巻き舌でない)」ことや「語尾のG・K・Tが発音されない」ということなどがあり、個人の特徴ではないのですが、ステファニーは半分冗談でこれを付け加えていますね。
英語学習者にとっては、このような言語の違いに着目して映画を観てみるのも面白いですよね!
知っていると作品を100倍楽しめる|「プロム」って何?
さて、この映画を観る上で最低限知っておきたいのは「プロム」というイベントについてです。
この「プロム」はpromenade(プロムナード)の略で、主にアメリカやイギリス・カナダの高校で行われる卒業生のためのダンスパーティーのことです。
そして、そのパーティーの中で男女一人ずつの「プロムキング・プロムクイーン」を選出します。
これは人気投票のようなもので、スポーツチームで活躍している男子やチアリーダーである場合が多く映画の中でステファニーが目指すのがまさにこれです。
「シニアイヤー」から学ぶ英語表現〇選
映画のセリフの中には勉強に使える素材がたくさん詰まっています。
まず一つ目は、上で紹介した「『プロム』に向けて、ステファニーは体型管理の一環で食事制限をしているため、お父さんがせっかく準備してくれていた朝食をふんわりと断る」というシーンをピックアップしました。
パパ、朝食はいらなかったのに。F: You’re about to graduate. We’re not going to have too many more of these breakfast opportunities. もうすぐ卒業だろ。一緒に食べる機会がたくさんあるわけじゃないんだから。S: Um, can we actually rain check? I’m on a diet of only bananas and ice cubes till prom.
ごめん、今日はやっぱりいらない。プロムまではバナナと氷だけにしているのよ。
お誘いありがとう、でも今回は遠慮しておくね。
“You don’t have to finish the question.”
次に紹介するのは上で紹介したシーンのすぐ後にやってきます。
毎日一緒に学校に行っているセスはステファニーの父親に娘をプロムに誘うようにけしかけられ(背中を押され)、遠慮がちに誘うシーンです。
もうすぐプロムだし、聞きたいことがあるんだ。難しいのはわかってるけど…S: Seth, you don’t even have to finish the question. The answer is yes.
言うまでもなく、答えは「イエス」よ!
直訳すると「質問を終わらせる必要はない」つまり、最後まで言う必要なく答えは明らかであるということを言いたい時に使える表現です。
答えは「イエス」でしたが、残念ながらステファニーがOKしたのはプロムではなく二次会のことでセスは少しがっかり。
言うまでもなく、私たちは親友だよね?
have to / don’t have toは学校では「~しなければならない/~する必要はない」という意味でしか習わないのですが、このように会話の中でどうやって使われるのかを合わせて覚えていくと実際に自分が使いやすいですよね!
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ストーリーに戻ります。
何かと嫌がらせをしてくるライバルが仕組んだチアリーディングの演技中の落下事故により昏睡状態に陥ってしまったステファニーは20年後に急に意識を取り戻します。
ステファニーが意識を取り戻したことを聞きつけたセスが家の前に置いてくれた寄せ書き入りの卒業アルバムを見ていると、自分のコンプレックスを克服するために目指していた目標を道半ばで失ったことを実感します。
そこでお母さんに自分のコンプレックスについて打ち明けたときの回想シーンが流れるのですが、そこにも興味深い表現がありました。
It doesn’t count.
ブスを克服しようと思って。からかわれるのはうんざりなの。
※make fun of~:からかう(中略)M: I think that you are beautiful and smart and funny… and I think the accent makes you unique.
あなたは美しいと思うわよ。それに賢いし面白いし、アクセントも魅力的よ。
S: Well, it doesn’t really count if you say it, Mum.
うーん、ママに言われてもね。
自分のコンプレックスに対し、お母さんが「そんなことない、あなたは魅力的よ」と言ってくれるのは親だからであり、意訳すると「お母さんから言われても意味ないのよね~」というニュアンスになります。
直訳すると「それは勘定しない・数えない」という意味になりますが、数に入らないから「意味がないこと・無意味なこと」という感じで使える表現ですね。
全部食べなくてもいいから、あと3口食べて!Boy:Okay… Look, look! I took three sips of juice.
はーい、ほら見て!ジュースを3口飲んだよ!Mum:You know that doesn’t count!
そんなの食べたうちに入りません!
日本語でも「ノーカウント」っていうカタカナ語があって僕も「それはノーカンで」っていう言い方をたまにするね。
例文のような使い方をイメージしてみると日常生活の中でもすぐに使えそうだなと思いませんか?
覚えたフレーズが使えそうなシチュエーションではどんどん使っていきましょうね!
元々通っていた高校の校長になったマーサの協力もあり、ステファニーは失われた時間を取り戻すために高校時代に戻り、憧れだったプロムクイーンを再び目指すことを決意します。
ステファニーにとっては自分のコンプレックスを克服してくれるものこそが人気者の証であるプロムクイーンであり、20年後に訪れた2回目の高校生活でもそれを奪還すべく、並外れたこだわりを持って邁進します。
その中で再びステファニーの邪魔をしようとするのはまさかの…
しかし、その中で彼女はこれまでに気づかなかった最も大切なことにステファニーは気づきます。
まとめ(作品総評)
すでに観てしまった人のレビューを読むと言葉遣いに下品なワードがあえて使われていたり、下ネタも含まれていたりするので「子どもにはあまり見せたくない」という意見があるのは事実です。
ただ、20年の昏睡状態を経て再び戻った高校生活を通してステファニーが気づいたことは誰もが見つめ直すべきことだと思います。
冒頭でも紹介しましたが、オージー・イングリッシュの雰囲気にも触れられますし、英語学習者に向けて特におすすめできる作品だと思います。