認知症・アルツハイマー、どちらも高齢社会の日本では身近な病気の一つになっていると思います。
自分が歩んできた人生を裏付けている記憶が徐々になくなっていくとどうなるのか、について考えたことはありますか?
同様のテーマを扱った映画はたくさんありますが、中でもおすすめの映画を厳選して3本紹介します。
① ファーザー
② アリスのままで
③ 君に読む物語
の3本です。
「THE FATHER(邦名:ファーザー)」
作品のおおまかな流れとしては、「認知症を患っている父・アンソニー(アンソニー・ホプキンス)の介護を仕事と並行してやっていた娘のアン(オリビア・コールマン)でしたが、症状の進行や自身の生活の都合があり最終的には介護施設に入れることになる」というものでストーリー自体に大きな起承転結があるわけではないのですが、作品の構成に強烈な特徴があります。
アンソニーは娘のアンと話していたと思ったら、随分前に娘と離婚したはずの元夫が現れたり、娘がパリに行くと言い出したと思ったら「そんな予定はない」と言われたり…
会話の相手や自分のいる場所が脈絡もなく変わっていくため、だんだんとストーリーを掴むことができなくなってきます。実はここがこの作品の面白いところです。認知症の人が生きる世界を疑似体験できる作品となっています。
認知症を患う家族と一緒に生活するのはとても大変なことだと思いますが、どのような世界が見えているかを知るのはすごく有意義なことだと思います。
「Still Alice(邦名:アリスのままで)」
言語学者のアリス(ジュリアン・ムーア)は若年性アルツハイマーを患い、皮肉にも専門家である自分が一番大切にしてきた「言葉」を忘れていってしまいます。
作品の冒頭で「人間が他の動物と違うのは”言葉を使うこと”である」という描写があるのですが、その”言葉”を失っていって最後に残るのは何なのか、というメッセージを家族との絆を通じて教えてくれる作品です。
作品の中でアリスがアルツハイマー患者を代表して、患者や家族に対してスピーチをするシーンがあります。そこで彼女は自分を含めたアルツハイマー患者のことを「忘れることを学ぶ」と表現しています。病気をポジティブに捉えて前向きに向き合っていこうとするアリスの力強いスピーチは必見です。
「The Notebook(邦名:君に読む物語)」
認知症を患って過去を思い出せない老女(ジーナ・ローランズ)に同様に療養施設に入所している老人・デューク(ジェームス・ガーナ―)が読み聞かせをしており、そこで読んでいる物語こそがこの映画のメインのストーリーです。
I am nothing special; just a common man with common thoughts, and I’ve led a common life. There are no monuments dedicated to me and my name will soon be forgotten. But in one respect I have succeeded as gloriously as anyone who’s ever lived: I’ve loved another with all my heart and soul; and to me, this has always been enough.
私はどこにでもいる
平凡な思想の平凡な男だ。
平凡な人生を歩み、名を残すこともなくじきに忘れ去られる。
でも一つだけ、
誰にも負けなかったことがある。
命懸けで、ある人を愛した。
私にはそれで十分だ。
これは作品の冒頭に出てくる主人公の一人のノア(ライアン・ゴズリング)が語りかけるように回想するシーンの言葉です。
物語の舞台はアメリカのシーブルックです。
夏休みに別荘に遊びに来たアリー(レイチェル・マクアダムス)に一目惚れをしたノア(ライアン・ゴズリング)ですが、身分の違いからかアリーの両親は交際に強く反対し二人を引き離そうとして休暇を切り上げることにしてしまいました。
アリーに会えなくなってからもノアは手紙を1年間出し続けるのですが、手紙がアリーに届くことはありません。(実は母親の手によって手紙はせき止められてしまっていたのです。)一方、アリーは「なぜ手紙をくれないのか」と二人の気持ちがすれ違ってしまいます。
戦争が始まり、ノアは戦場のアトランタへ。一方、アリーはボランティアをしていた病院でロンに出会い、身分の申し分のないロンとの交際は順調に進んでいきます。
ある日、偶然ノアはアリーを見かけて大喜びで声をかけようとするのですが、ロンと一緒にいるのに気づき、声をかけることができません。
夏休みに二人で話した理想の家を完成させればアリーが戻ってきてくれると信じたノアは復員手当や父が実家を売って作ってくれたお金を使って土地を買い、家の建築に没頭し始めます。
しかし、完成後もアリーが帰って来ないと悟ったノアは家を売りに出すことを決意しました。そして、アリーはロンとの結婚が決まり、式の準備を進めている中で偶然にも新聞でロンが家を完成させたことを知ります。
お互いの気持ちを知りながらも身分の違いという大きな壁や運命のいたずらにより、何度もすれ違い続けた二人の結末はどうなるのでしょうか。
そして、母親がなんとしてでも二人を引き離そうと思っていた理由とは…
冒頭に挙げた詩の中の一途な言葉からもわかるように報われない恋と諦めないノアの生きざまを描いた作品です。
作品のストーリー上、認知症の女性に読み聞かせをする形で物語は進んでいくのですが、その物語だけを観ても若い男女がすれ違う切なさに胸が熱くなること間違いなしです。
まとめ
現代では、認知症・アルツハイマー、どちらも自分の周りにいつ起こってもおかしくない身近な病気になりました。
「記憶が無くなっていった最後に何が残るのか」というテーマはストーリーとしても考えさせられることはたくさんあるのですが、これらの病気・症状に対する理解を深めるという意味でも良い経験となります。
今回の記事で気になったものを観てみてください。